シナイの王国

演劇部顧問ナカムラのあれこれ

何した

香山リカの「しがみつかない生き方『ふつうの幸せ』を手に入れる10のルール」が面白かった。ルールのうち特にいいのが「仕事に夢を求めない」というのと「生まれた意味を問わない」、「勝間和代を目指さない」。

「仕事に夢を求めない」の章でラカンの引用がある。「無意識とは他人の欲望である」。他の書物でも引用されることが多いが、やっとどいういうことか分かった。その通りだ。よく無意識だからその人そのものが現れるとか言うが、自分の無意識が抱いている夢はたいてい自分の意識では思いもよらない、おぞましいものであるという。自分の欲望と考えるからいけないので実現しない方がよいこともいっぱいある。欲望が充足されることがすべて正しいわけではない。無意識の底にあるおぞましいものは自分の本当の姿ではない。そんなもの自分であるわけがない。

以下、脚本について。他人の気持ちは悪魔にしか分からない、ということだそうなので、彼が何を思ったはどうでもよく、彼が何をした、何を言ったが問題である。何をした、とことしか書かないでよいのだ。動機なんて考えるから小難しくなる。「何のために生まれてきた」論である。
だいたい小難しいこと言わない、こじゃれたこと言わない、打ち明けない、説明しない、語らない、という自分で決めた縛りがあるので、台詞は短くなるばかりだ。日常語だけしか出てこない。あと、思わせぶりしない、企まない。自慢しない。二枚目意識持たない。あれしないこれしない、だからシナイの王国。