シナイの王国

演劇部顧問ナカムラのあれこれ

月3万

今なにをしているかというと、再任用は2023年の3月で終わりにして、高校と中学の非常勤講師をしています。

昨年度再任用で行っていた韮崎工業高校という学校は、生徒が素朴で素直で、ここでもうしばらく続けてもよかったのですが、演劇部の指導ができないので、再任用はよして非常勤講師になり、演劇部の外部指導員をすることにしました。そうは言ってもただの技術指導だけだとおもしろくないので、指導する演劇部に講師の口を求めて、とりあえず先生の立場で部活も見るという半顧問のような立ち位置です。

韮崎工業での一年間はほんとうに楽しく、生徒ともなかよくやってました。去年の三年生があるとき、「先生こどもいるの」というのでうっかり「できなかったんだ」と答えてしまい、言ったそばからしまった、ただいないよ、と答えればよかったと後悔しました。案の定、ここの生徒は優しいので気まずい感じになってしまいました。まあ、ほかの学校だと「子どこいるの」という質問も来ないのですが、ここは何事も率直なので。何とかしようとして「養子になるか」と冗談で返すとクラス中ほっとしたように笑いが起きます。あ、授業中の話です。そうすると質問をした当人が「いいね、行こうかな」と言って、また笑いが起きる。「先生は金持ちだそうだからいいんじゃないか」とかみんなではやします。そうするとまた当人が「先生、おれ、月に三万は入れるからね」と言ったので、これはちょっと、感動しました。受験する子もいますが、多くは就職するので、来年からはちゃんと稼ぐんだという、なんというか腹が座っている生徒が多いんです。

うちに帰って妻に話すと、ちょっと涙ぐんで「偉いねえ」と言ってました。この話はほかで何度もしてるのですが、3人くらい泣かしています。今まで甲州弁で言うとこうしゃっぽい生徒とばかり付き合っていたので、こんな率直な気取らない物言いをする生徒は久しぶりでした。こうしゃっぽいというのは生意気、かっこつけというようなニュアンスです。

「先生は元ヤンですか」と聞かれた時もうれしかったです。仲間に入れてくれたのかなとも思いました。「いやオタク」と答えると「何オタクですか」と言うので一応「純文学オタク。夏目漱石とか太宰治とか」と答えると、この返しも本当によかった。「好きなことがあるのはいいことだね」

彼らは説明が嫌いで聞かないので、とりあえずやらせてみて、できないところを個別に教えたり、生徒同士で教えあったりという授業スタイルだったのですが、彼らだけでなく今までの生徒も説明なんて嫌いだったんじゃないかと気が付きました。また、偏差値70オーバーの生徒も教えてましたが、つまらないとすぐそっぽむくという点では共通してましたので、授業はけっこうたいへんでした。一度も大声も出さず怒りもせず授業できて、まあそれは初めからそうしないでいこうと決めていたのですが達成できてよかったです。「先生くらいがちょうどいい」というお褒めの言葉をいただいたのでよかったです。なにがちょうどいいのかはよくわかりませんが。

演劇部の指導をしたかくてけっきょくやめたのですが、ことしも二コマ授業があるので週二回通っています。こないだ相談を受けたのは、彼女とどこのはま寿司に行けばよいか、電車賃使うべきか、歩かせるべきか、ということで、家に帰って妻に話したらちゃんと真剣にアドバイスしたのかと詰められました。しましたよそれは。