シナイの王国

演劇部顧問ナカムラのあれこれ

創作台本の作り方 2 設定・題材

2 設定・題材
  すばらしい設定の畑澤聖悟作「最終試験場の9人」青森中央高校
  大学の推薦入試の会場・試験官を感動させたら合格
  試験場には8人の受験生のはずが9人目がいる

  どこがすばらしいか。

  観客を引きつける。
  ・合格するのか?(制限時間は45分、間に合うのか?)
  ・どうやって感動させるのか?
  ・9人目の正体は?
  それぞれの人物は個性的で(推薦だからいろんな高校からやってくる)、衝突したり
  説得したりしながら合格に向かって努力する。

  独りよがりな葛藤はない。観客の共感を呼ぶ。
  
  自分を知る・自分探しをする→他人との距離を測る・他人を知るということ。
 他人のことをわかってはじめて自分が分かる。

  ひとりよがりな複雑な設定を考え、実はこの人物はこういう過去を持っていて、とか、
  この世界ではこういう習慣があって、とか脚本にも舞台にも反映されない裏設定を山ほど
  作る人がいるが、こういう「設定馬鹿」にならないように気をつける。

  人物の動機はあまり興味を持たれない。動機語り・トラウマ語りは面白くない。
  興味を呼ぶのは…目的 やむにやまれぬ目的があるところに物語は生まれる。
  人物には目的が必要・目的には障害がつきもの。
  どうしてこんなことしたのかえんえんと語られても面白くない。
  悟空には世界一強くなるという目的があり、桜木花道には流川楓に勝つという目的
  があり、進藤ヒカルには遠い過去と遠い未来をつなげるという目的がある。
  90年代ジャンプでまとめました。
  演劇的な設定とは?
  
  人の出入りに必然性があること。
  
  セミパブリックな空間(平田オリザ)観客に必要な情報を与える必要がある。

  「全校ワックス」廊下…アイウエオ順、お互いが知り合い、お互いがよく知らない。
  ある一定の時間(出たり入ったりしながら)全員その場所にいる理由=意味がある。
  積極的にその場所にいたい←→どこかに行ってしまいたいがしょうがなくいる

 脚本で真っ先に考えたいのは…場所
  場所が決まったらなるべく動かない。場面を変えるのは映像の得意技。
  暗転のないのが理想。転換にはそれなりの効果が必要。
  筋を追うためにだけある場面転換は…演劇的でない。

  題材…なんでもよい。60分は短編。
  俳句 柿食えば鐘が鳴るなり法隆寺 
  「柿」と「鐘」と「法隆寺」は何の関係もない。
  ナンセンスと抒情性は相性がいい。
  
  人物…人物は関係性によって表現される。
  他人がそのひとをどう思ってるか、どう扱うか。空気感をつくることを考える。
  難しいことではなく、いわゆる「空気読めよ」のあの空気である。
  自分のことばかり言う人は嫌われる。
  他人の気持ちは悪魔にも分からない。彼が何を思っていたか、ではなく、
  彼が何をしたか、と考える。

  人の感情、気持ちにすべてを還元しない。演劇で描くのは感情・気持ちだけではない。
  演劇で表現するのは、人間の存在であると思う。
  人が思うようにいかないでうちひしがれている、その気持ちの悲しいこと、でも、
  もっと描くべきは、人は思うようにいかないことがあるのだ、という運命と、
  運命への立ち向かい方だろう。
  悲しいのは分かった分かった。