シナイの王国

演劇部顧問ナカムラのあれこれ

やり口の問題

新しい学校へ行くことになって、まだ演劇部顧問になるかどうか分からないが、なっても今までのようにはいかないだろう。メンバーも環境も違えばやりかたも違ってくるだろうから、これまで工夫してきたこともいったん措いて、一から考えなくてはならないだろうと思う。
甲府昭和でやってきたことは、たいへん簡単な原則を作って、迷ったらその原則に基づいて決めるようににすることだった。優先事項と言ってもよい。いくつか挙げてみる。と言っても心構え的なことではない。芝居を作る上での工夫である。以下思いつくまま。

・台詞は言うより聞く方が大事。なにしろもたれあい演劇なもので、あまりうまい人もいないし、まわりで盛り上げるしかない。しゃべる方がうまくしゃべるより聞いている方が場を作った方がうまくいく。なにより手っ取り早い。台詞がうまくなるのを待つよりも。
・同じく台詞より立ち位置、姿勢。どこにいてどう動くのが先決でそれができれば何を言っても変わらない。試しに中華料理屋のメニューを読みながら歩いてもいいシーンになるはず。ミザンセーヌ命。
・広い舞台は埋めない。広く使う。少ない人数を点在させる。「全校ワックス」は広い間口を広く見せるために廊下にして上手から下手まで長い距離を雑巾がけして距離を強調した。人物は横並びせず奥行きを見せた。「放課後の旅その他の旅」は舞台の奥行きを強調した。シアター1010の奥行きのある舞台を想定して脚本を作った。人数も10人以上のキャストがすれ違って裸舞台を行き来し、奥行きを見せた。ただちょっと感覚がおかしくなって道具で舞台を埋めた芝居を観るとすごく狭く感じ、どう動かすのかすごく気になる。
・大黒でSSを強めに使うと人物が浮き上がる。
・BGMは二回まで。基本はコントラプンクトで。悲しいときに悲しい音楽をかけてどうするんだろう。
・よけいなことは何もしない。基本、手は使わない。
・台詞は立てない。「 」を付けずに話す。よく棒読みと言われる。
・台詞は感情の容れものではない。ついでに演技も感情の伝達ではない。
・説明は避ける。ただ60分で何か物語ろうとすると必ず説明的な部分は必要になる。そこで、物語はあきらめる。
・感情表現でもない、自己表現でもない、説明しないストーリーもない、ではなんだと言われたら、存在の表現だということにしておく。あるいは関係の表現。どちらも同じことを指す。
・自己弁護しない二枚目意識持たないかっこいいことしない。いい台詞言わない。気持ち悪い。
・台詞は短く。べらべらしゃべらない。だいたい言いたいことがあって芝居をしているわけではない。ただしやりたいことは山ほどある。このあたりで、論理的でないだの非人間的で恐ろしいだの言われることになる。
・話は変わるがある年代のあの言葉遣いの粗さはどうだ。荒さではない、粗さである。とにかく早くお引き取り願おう。

ああいい気になって書いちゃった。調子に乗ってると痛い目に遭うんだよな。これはあくまで方法などといった大それたものではない。やり口だ。