シナイの王国

演劇部顧問ナカムラのあれこれ

方法の問題

台詞は短く、間は不自然に、できたら長めで。
会話は基本的にかみ合わない。
聞こえても聞こえなくてもいい台詞はどちらかというと聞こえないように。
声は張らない。
台詞の語順は適当に並べ替える。
登場人物の人格は不統一。
言いたいことは何もないのが基本。
行動に一貫性はなく。

昔はとんがってたなあ。こんなことをしてるのでだいたい嫌われてしまう。コンクールでは。
大会で認められないのは承知だった。
こういう方法で部員も納得して「先生、もっとやりましょう」「こうすればもっと気持ち悪くなります」「こんな不自然な振り向き方はどうでしょう」などとやっていたんだ。
他校の芝居を観ると、「あの学校面白いけど、さわやかでいやですね」なんて言っていた。
「全校ワックス」の4年前。関東大会に「act.緑の地球を救え」で参加した頃。
絶賛してくれたのは二人。広い会場で二人、でもこちらも二人いてよかったと思うくらい。
はっきり言って「全校ワックス」は賞を取りに行った。だから基本、優しい作りをしている。あれで?そう、あれで。

こういう芝居では方法論を部全体に徹底しないとダメなんだ。
方法を部員が共有するためにはどうすればいいか。共通の敵を作ることだ。
自分もそうしていたから。

たとえば社会的な問題を批判的に扱っている学校の芝居などは、
「演劇は思想の容れものではない」「これでは思想の奴隷だ」とかね、
細やかに登場人物の感情を表現するすぐれた演技を観ても
「演劇は感情の表現はなく、存在の表現だ」とか。
はらはらドキドキのストーリーを見事に展開する舞台には
「筋に奉仕するなんて演劇の堕落だ」「筋の説明に終始するのは不自由だ」なんて。

批判はいくらでもできる。しようと思えば。公式にあてはめるように、これがない、あれがない、と言えばいいのだ。
けなしておいて「厳しい評はその人のため」なんて言っちゃダメですよ。「厳しい評」は評者自身のためでしょう。相手の気持ちに届くだけの芸がないんだ。力と言ってもいい。
自分は持っていないので悪口は聞こえないように言う。