シナイの王国

演劇部顧問ナカムラのあれこれ

チョコレート

2月14日のこと。
ここで小十郎が熊の言葉がわかるような気がした、と考えるようになったのは、熊と自分を同じ命を持つものと認めたということなんですね。赤ずきんちゃんに出てくる狼は人の言葉をしゃべりますが、ああいうのと違います。
改めておまえは何が欲しいのだ、と熊に言われて、非常に何か根源的な問い、生きる上で大本になるようなところに突き刺さるような問いを突きつけられたわけです。
何が欲しいって、次に小十郎が言うように、毛皮と肝に違いありません。毛皮と肝、これを町でいやな思いをして荒物屋の旦那にこびへつらってしかも安く買いたたかれてお金に換えるわけです。そうしてお米を買うわけです。つまり熊の命を奪って自分と家族が生きながらえるわけです。
ところが熊の命と自分の命は同じ命じゃないですか。熊に改めてそのことを気づかされた時、小十郎はどうしていいかわからなくなるわけですよ。
わたしたちは、何かを踏みつけにして生きているのかもしれません。
そう言えば、今日は。そうそう。なにかいいことありましたか?
今から非常にいやなこと言いますよ。いいですか。
そのチョコレートをね、何で作るか知ってますよね。カカオだよね。ガーナなんて産地として有名だね。
あのね、ガーナではね、毎日毎日カカオ畑で小さい頃から働いて、しかもチョコレートを食べたことない子どもがおおぜいいるんだな。
わたしたちの豊かさはだれかの貧しさの上に立っているのかもしれません。

ト、ここでチャイム。起立。礼。
廊下に出ると、きれいにラッピングした小さな包みを持った女子が6人ほど、非常に申し訳なさそうに立っていて、ごめんなさい、と言いながらチョコレートをくれた。