シナイの王国

演劇部顧問ナカムラのあれこれ

冒険

つい先ほど終わった冒険の旅のことを書く。
居眠りをしていて起こされ、歯を磨いた。右の奥歯から磨き始め、寝ていて口の中がねばねばするし、一本ずつ念入りに時間をかけて磨いていった。歯の質はいい方で、長いこと歯みがきはいい加減だったが、奥さんの厳命で、歯みがきは念入りにしないと怒られる。怒られるのは嫌いなので、電動歯ブラシを使ってしっかり磨くようにしている。
寝ぼけまなこでゆっくりゆっくり、右の上の奥歯の表側から裏側、上の前歯表裏、左の上の奥歯表裏と磨いているうちに、ずいぶん遠くまで来たなあ、と思い始めた。
ずいぶん遠くまで来たなあ。出発してからもう長い時間が経っている。これじゃあバスで帰らないとならないなあ。このへんにバス停はあるかなあ。タクシーはつかまるかなあ。
と思っているうちにブラシは下の前歯から右の下の奥歯に戻ってきた。ついに帰ってきたのだ。ぼくの小さな冒険も終わりを迎えたのだった。