シナイの王国

演劇部顧問ナカムラのあれこれ

私は甲府の隣町に住んでいるが、貧しい山梨県にしては税収が多く、地方交付税不交付団体なので、合併相手を選んでいるうちに乗り遅れた。住所が長い。その割りには番地がシンプルでうちなんかはただの14番だ。信じられないかもしれないが、ほんとうに「14」で、近くには「5」とか、「8」なんていうのもある。子どもの頃から遊び場は当然町内、あとはバスか電車で甲府市内だった。
就職して最初の勤務校は甲府市内、二校目の話だ。国語科の歓送迎会があったが、まあ非常にアットホームな感じで一通りあいさつが済むとすぐ雑談、なにしろ地元の人が多い。実はそのときおれ以外皆地元だった。八ヶ岳の麓の学校だ。歓送迎会二時間半、二時間が猿の話だ。
どこに猿が出た、猿にどうこうされた、猿が何匹いた。
おれはどこの国にきたのかと思いましたよ。
ある時の生徒の遅刻の言い訳は、道ばたから急に鹿が出てきたのでよけようとして転びました、だった。登校中に鹿を見たそうだが、本当だそうだ。動物の話は様々聞いた。ほとんどの生徒は「八ヶ岳山系」か、「南アルプス山系」かどちらかから来る。生態系が違うらしく、「八ヶ岳山系」には鹿、狐、てん、などがいる。てんだよてん。「南アルプス山系」には熊、猪、猿などがいて、小中学生はカバンに笛を付けて登校するそうだ。
学校の標高も630メートルと高かったが、いちばん上に住んでるのは1300メートルくらい。圧力釜でなければご飯に芯が残る。テニスはボールが弾むので空気圧を調整する。高地トレーニングをしてるようなものだし、アップダウンを子どもの頃から駆け回っているので非常に体力がある。
いや、いいところでしたよ。